介護福祉士は、介護が必要な高齢者や障がい者の方に対し、日常生活をスムーズにするために介助したり、日々の生活に関する相談を受けたりする仕事です。
大変な面もありますが、その分やりがいも大きな仕事であり、主婦や社会人から介護福祉士を目指す人も少なくありません。
この記事では、介護福祉士になるために必要な資格や、資格の取得方法などを解説します。
主婦や社会人が介護福祉士になるには国家資格が必要
介護福祉士とは、介護業界唯一の国家資格であり、介護に関する高い知識とスキルの証明となる資格です。
介護福祉士は、利用者や家族に対する精神上・身体上のケアや介護スタッフのマネジメントなどを行うことができます。
1987年制定の「社会福祉及び介護福祉士法」によって定められた資格で、2011年の法改正では喀痰吸引と経管栄養といった医療行為を行うことも認められました。
国家資格には名称独占資格と業務独占資格の2種類がありますが、介護福祉士は名称独占資格です。
つまり、介護福祉士の資格を持っていないと介護福祉士と名乗れませんが、介護の業務自体は資格を持っていなくとも行うことが可能です。
超高齢化社会の到来により、介護業界においては慢性的な人手不足が続いています。
マネジメント業務まで行うことができる介護福祉士へのニーズは高まりを見せています。
介護福祉士資格の取得方法
- 介護福祉士資格の取得ステップ
- 介護福祉士国家試験の合格率
- 介護福祉士とヘルパーの違い
介護福祉士資格の取得ステップ
介護福祉士資格には、大きく分けて以下の3つの取得ステップがあります。
- 実務経験ルート
- 養成施設ルート
- 福祉系高等学校ルート
実務経験ルートでは、介護福祉士国家試験の受験のために3年以上の実務経験を必要とします。
養成施設ルートでは介護福祉士養成施設を卒業すること、福祉系高等学校ルートでは福祉系高等学校を卒業することを受験要件としています。
主婦や社会人の場合、今から福祉系高等学校に入学することは難しいため、実務経験ルートもしくは養成施設ルートを選ぶ必要があります。
介護福祉士国家試験の合格率
2020年1月26日(筆記)と3月1日(実技)に行われた試験結果によると、2020年の介護福祉士国家試験の合格率は69.9%です。
2016年以前は合格率が65%を越えることは無かったのですが、2017年以降は70%程度まで上がっています。
合格率が上がった理由は、実務経験ルートの実務者研修が必須化したことで、全体的な受験者数が減ったためだと見られています。
介護福祉士試験の合格基準は、総得点の60%程度です。125点満点の試験のため、75点程度が合格基準点となるでしょう。
どちらかといえば、受験資格を得ることが難しく、試験自体の難易度はそこまで高くないと言えます。
ちなみに、同じく福祉系の国家資格である社会福祉士の合格率は30%程度です。
介護福祉士とヘルパーの違い
介護福祉士とヘルパーでは、高齢者や障がい者の方に対し、心身の介護や家事サービスを提供する点は変わりありません。
しかし、介護福祉士は介護のスペシャリストとして、現場責任者に就いたり介護職員の指導を行ったりすることができます。
一方、ヘルパーはマネジメントのポジションに就くのは難しく、職務領域において大きな違いがあるのです。
また、必要な資格の種類も異なります。
介護福祉士は介護福祉士の資格を取得が必要ですが、ヘルパーの場合は介護職員初任者研修、もしくは介護職員実務者研修の修了が条件です。
介護職員初任者研修は3か月程度の学習で取得可能であり、介護系の資格の中で最も難易度が低い資格と言えます。
主婦や社会人が介護福祉士資格を取得するメリット
以下では、主婦や社会人が介護福祉士の資格を取得するメリットを3つ紹介します。
主婦や社会人が介護福祉士資格を取得するメリット
- 介護福祉士の資格手当がつき給料がアップしやすい
- 介護施設の利用者から安心感・信頼感を得やすい
- 介護業界の就職・転職がしやすい
介護福祉士の資格手当がつき給料がアップしやすい
介護業界で働く場合、介護福祉士の資格を持っていると資格手当がつくため、給料がアップしやすいことが大きなメリットです。
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均給料は、313,920円です。
一方、実務者研修有資格者では288,060円であり、25,860円違いがあります。つまり、介護福祉士の資格を取得すると、月収が25,000円以上高くなるのです。
介護業界は給料が低いことが問題視されていますが、介護福祉士の資格手当をもらえれば、他の業界・職種と比べても給料の低さは目立たなくなるでしょう。
待遇アップのために、介護福祉士取得はおすすめの方法です。
介護施設の利用者から安心感・信頼感を得やすい
介護福祉士資格は、介護業界唯一の国家資格です。つまり、一定以上の知識・技能を有すると国に認められた介護従事者となることができるのです。
国家資格を保有している介護職員がいれば、利用者や家族が安心感を得やすいでしょう。
利用者は「呼びかけても無視されるのではないか」「誠意を持った対応をしてくれるのか」など、満足いく介護を受けられるか心配しています。
家族としても、介護の負担が軽減することは確かですが、親が介護施設内で虐待を受けないか等不安になるでしょう。
利用者にとっては、身を預ける施設に介護福祉士の資格保有者がいることで、信頼できる施設かどうか一つの基準になるのです。
介護業界の就職・転職がしやすい
介護福祉士の資格を保有していれば、介護業界への就職や転職に有利に働きます。
人材不足の介護業界では人を育てる余裕がない場合も多いですが、介護福祉士の資格を持っていれば即戦力として期待されます。
2017年には介護福祉士の資格を有していて、福祉・介護の仕事に就いていない人の届出制度が創出されました。
具体的には、都道府県の福祉人材センターへの届出をする努力義務が定められたのです。
また、社会福祉事業等経営者や介護福祉士養成学校・養成所の設置者についても、介護福祉士の資格を持つ退職者や学生の届け出が努力義務として課せられるようになりました。
以上のことから、介護福祉士へのニーズは高いと言え、就職や転職がしやすい状況です。
介護福祉士資格を実務経験ルートで取得する方法
主婦や社会人が介護福祉士の資格取得を目指すには、実務経験ルートと養成施設ルートの2つがあります。
まずは、実務経験ルートでの取得方法を解説します。受験資格や対象施設など具体的に紹介するので、ご参考ください。
介護福祉士資格を実務経験ルートで取得する方法
- 実務経験ルートとは
- 実務経験ルートの受験資格・条件
- 実務経験の対象施設・職種
実務経験ルートとは
実務経験ルートとは、介護の実務経験を積んだ上で介護福祉士国家試験を受験し、資格取得を目指す方法です。
条件を満たすと、介護福祉士国家試験において実技試験が免除されます。
資格を得るための条件は、実務経験の年数だけでなく、実務経験を積んだ後に所定の研修を受けることも必要な点にご注意ください。
実務経験ルートの受験資格・条件
実務経験ルートの受験資格・条件は、下記の通りです。
- 3年以上の実務経験+実務者研修の修了
- 3年以上の実務経験+介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修の修了
「3年以上」の具体的な条件は、従業期間3年(1095日以上)、かつ従業日数(実際に勤務した日数)540日以上です。
「社会福祉士及び介護福祉士法」の法改正により、(1)の場合において、2017年度から実務者研修の受講が必須となりました。
実務者研修は正式には「介護福祉士実務者研修」と呼び、質の高い介護サービスの安定供給を目的に、基本的な介護能力の取得を目的にした資格です。
実務者研修の受講科目と時間数は、20科目・450時間(6か月)です。
ただし、介護職員初任者研修を受講していれば、共通の9科目の受講が免除されるため、取得期間が短縮できます。
(2)の受験資格に関してですが、介護職員基礎研修は2012年度末で廃止され、2013年以降は実務者研修に一本化されました。
制度改正前に介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修を修了していれば、受験資格とみなされます。
実務経験の対象施設・職種
実務経験の対象施設は、主な事業として介護等が営まれる事業所です。
例えば、特別養護老人ホーム・障がい者施設・地域福祉センターなどの社会福祉施設、病院や診療所といった施設が該当します。
ただし、上記の施設で働いていても、対象となる場合と対象にならない場合があります。
実務経験の対象職種の代表的なものは以下の通りです。
- 介護職員
- 介護従事者
- 介助員
- 支援員
- 看護補助者
- 看護補助者
逆に対象とならない職種としては、医師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった職種が該当します。
介護の業務を専門的に担当していたのかという点が重要です。
介護福祉士資格を養成施設ルートで取得する方法
介護福祉士養成施設を卒業することで、介護福祉士資格の受験要件を得ることも可能です。
最短1年で受験資格を得ることができるため、場合によっては実務経験ルートよりも短期間で資格取得が可能です。介護福祉士養成施設の種類やルートを詳しく解説しています。
介護福祉士資格を養成施設ルートで取得する方法
- 養成施設ルートとは
- 介護福祉士養成施設の種類
- 2022年4月1日から介護福祉士試験の受験が必須に
養成施設ルートとは
介護福祉士養成施設を卒業し指定のカリキュラムを修了することで、介護福祉士国家試験(筆記試験)の受験要件を得ることができ、実技試験も免除されます。
養成施設ルートの具体的な条件は、以下の通りです。
- 高等学校を卒業後、2年制以上の介護福祉士養成施設を卒業
- 高等学校を卒業後、福祉系大学・社会福祉養成施設・保育士養成施設のいずれかを卒業した後、1年生以上の介護福祉士養成施設を卒業
介護福祉士養成施設の種類
介護福祉士養成施設には、2~4年制の介護福祉士養成施設と1~2年制の介護福祉士養成施設を合わせて、全国で380校存在します。(2019年4月1日時点)
介護福祉士養成施設の種類ですが、まず介護福祉士養成施設として認定されている4年制の大学が挙げられます。
4年制の大学のため、介護福祉士に関する科目だけでなく、教養を学ぶ基礎科目や専門科目など、さまざまな講義を受けることができます。
デメリットとしては、学費や時間がかかることが挙げられます。できる限り費用や時間をかけたくない人は、2年制の短大や専門学校で学ぶことも可能です。
専門学校の場合、現場での業務に直結する即戦力として活躍可能なスキルが身につきやすい点が大きなメリットです。
また、保育士資格や社会福祉士受験資格を持っている人や福祉系大学を卒業した人あれば、大学や短大などの専攻科で1年学ぶだけで受験資格を得ることが可能です。
2022年4月1日から介護福祉士試験の受験が必須に
2021年度(2022年3月31日)までに介護福祉士養成施設を卒業する人に限り、介護福祉士国家試験が免除されます。
筆記試験に合格しなくとも、登録申請すれば、卒業後5年間は介護福祉士資格取得者とみなされるのです。
実は以前まで、養成施設ルートは介護福祉士養成施設を卒業すれば、資格を取得できるという制度でした。
法律の改正により現在は介護福祉士国家試験の受験が必要とされたのですが、経過措置として2021年度までは上記のルールが適用されます。
ただし、経過措置以降も継続して資格を有効にするには、卒業後5年間のうちに、介護福祉士の筆記試験に合格するか、卒業後5年間継続して介護等の業務を行う必要があります。
2022年4月1日からは介護福祉士養成施設を卒業した後に介護福祉士兼の受験が必須となるため、合格点を目指して勉強しなくてはいけません。
主婦や社会人におすすめの介護福祉士受験対策講座3選
主婦や社会人が介護福祉士の資格取得を目指す場合、原則として筆記試験を受ける必要があります。
試験の難易度はそこまで高くはありませんが、合格率を高めるために試験対策は必須です。
忙しくて時間がない主婦や社会人が無理なく勉強を続けるには、通信講座の利用をおすすめします。
今回はおすすめの受験対策通信講座をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
主婦や社会人におすすめの介護福祉士受験対策講座3選
- ニチイの介護福祉士国家試験対策講座
- ユーキャンの介護福祉士合格指導講座
- 資格の大原の介護福祉士(実践)講座
ニチイの介護福祉士国家試験対策講座
一つ目に紹介するのは、全国にわたり介護事業所を運営するニチイの介護福祉士国家試験対策講座です。
介護現場で培われたノウハウがカリキュラムにも反映されている点が特徴です。
所属の現役介護士の声を集約し、試験で出題される可能性が高い重要ポイントを100項目抽出しています。
ポイントに絞って学習すれば、無駄のない効率的な学習が可能です。
また、質問回答システムにより、疑問や不安に対してスピーディに対応してくれる点もメリットです。
ニチイの通信講座なら、仕事や学校と介護福祉士試験の勉強を両立しやすい環境が整っています。
ユーキャンの介護福祉士合格指導講座
通信教育大手ユーキャンの介護福祉士合格指導講座もおすすめです。
試験合格対策だけでなく、実務者研修対策もセットとなっている点が特徴です。
実務者研修のスクーリングは全国各地で行っているため、忙しい人でも無理なく通うことができるでしょう。
また、サポート体制が充実している点もユーキャンの介護福祉士講座の特徴です。
介護関連の最新情報は素早く伝えてくれますし、疑問点が生じたらメールで質問ができ、専門スタッフが丁寧に回答してくれます。
学習目標期間である6か月を経過しても、目標試験月までの期間はしっかりサポートしてくれます。
資格の大原の介護福祉士(実践)講座
資格の大原の介護福祉士(実践)講座は、短期間で資格取得を目指す人におすすめです。
ユーキャン同様、実務者研修のスクーリングを実施しており、スクーリングは最短6日で修了可能です。
筆記試験対策のカリキュラムも効率的な内容であり、3か月程度で全ての過程を終わらせることができます。
また、資格の大原は実習施設が充実している点も特徴です。
施設介護だけでなく入浴介護や在宅介護に至るまで、実際の現場にいるような環境で実践的に学ぶことができます。
即戦力としての知識やスキルを身に付けたい人にも、おすすめです。
主婦や社会人が介護福祉士の資格を取得する方法をおさらい
主婦や社会人が介護福祉士の資格を取得するためには、実務経験ルート、もしくは養成施設ルートの2種類があります。
実務経験ルートでは、3年以上の実務経験を積んだ後に実務者研修を修了することで、介護福祉士国家試験の受験要件を得られます。
養成施設ルートでは、国指定の介護福祉士養成施設で所定の年数学び卒業することで、受験要件を満たします。
どちらのルートの場合も、あくまでも受験要件を満たすだけであり、筆記試験に合格しなければ介護福祉士の資格を得ることはできないため、注意してください。
忙しい主婦や社会人が筆記試験の勉強をする場合、隙間時間を利用して効率的に学ぶことができる通信講座の利用がおすすめです。