失業保険は会社をやめた後、毎月一定の金額を補助してくれるありがたい制度です。
しかし、しっかり制度を理解しておかないと、本来もらえるはずのお金がもらえなくなったり、返金を求められたりすることも。
そこで今回は、失業保険のメリットとデメリット、手続きや注意点についてまとめました。
妊娠や出産時に使えるオプションなど、特に女性が知っておきたい知識についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧下さいね。
失業保険受給のメリット・デメリットと手続き要約
- 失業保険は雇用保険に一定期間加入していた人が失業中にもらえる
- 退職後すぐに再就職が決まるような場合は、失業保険をもらわない方がお得になる場合も
- 失業後一定期間は失業保険をもらえない。アルバイトをする場合は不正受給にならないようにハローワークに事前相談を
失業保険とは
そもそも失業保険とはどのような制度なのでしょうか。
失業保険とは
- 失業保険の概要
- 失業保険がもらえるのは90日~150日間
- 失業保険は前職の給与の50~80%程度もらえる。ただし8,335円まで
失業保険の概要
失業保険は、雇用保険の加入者が会社を退職してから次の仕事が見つかるまでの間、国から一定の生活費を受け取れる制度です。
そしてこの毎月もらえるお金のことを、失業手当(※)といいます。
※正式名称は「雇用保険の基本手当」
失業保険の手続きや給付は、各地にあるハローワークが担当しています。
このため、失業保険を受給したいときは会社や国に申し出るのではなく、自分が住むエリアを管轄しているハローワークで手続きしなければなりません。
失業保険がもらえるのは90日~150日間
失業保険の支給期間は、退職理由、年齢、雇用保険の加入期間により差があります。
基本的には以下の表のようになっています。
- 自己都合退職の場合
被保険者期間 | 10年未満 | 10年~20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
支給期間 | 90日 | 120日 | 150日 |
- 会社都合退職の場合
被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年~5年未満 | 5年~10年未満 | 10年~20年未満 | 20年~ |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳~35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳~45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳~60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳~65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※2020年6月1日時点
出典:ハローワークインターネットサービス – よくあるご質問
ただし、障害があるなど就職が難しい場合などにも、支給期間が変わってきます。詳細はハローワークのホームページにてご確認下さい。
失業保険は前職の給与の50~80%程度もらえる。ただし8,335円まで
では、失業保険は具体的にいくらもらえるのでしょうか。
おおまかには「退職前における固定給の50%~80%」が支給される、と考えて下さい。
ただ、1日のもらえる金額(基本手当日額)には、上限があります。
計算式は以下のようになっています。
①1日にもらえる金額(基本手当日額) = 賃金日額 ×給付率(50~80%)
②賃金日額 = 直前の給与の6ヶ月分÷180日
ただ、実際の計算は若干複雑ですので、ハローワークで確認しましょう。
上限額は、以下の表のようになります。
年齢 | 上限額 |
---|---|
30歳未満 | 6,815円 |
30歳以上45歳未満 | 7,570円 |
45歳以上60歳未満 | 8,335円 |
60歳以上65歳未満 | 7,150円 |
失業保険のメリットは「経済的な支え」
失業保険のメリットはなんといっても、転職活動中の生活を経済的に支えてくれることです。
毎月一定のお金が振り込まれますので、日々の生活の心配が少なくなり、安心して転職活動を行うことができます。
失業保険のデメリットは「加入期間のリセット」
一方で、失業保険の受給の際には考えておきたいデメリットもあります。
それが、「加入期間のリセット」です。
会社の都合ではなく自分の意志で会社をやめた場合(自己都合退職)、失業保険を受け取るには、退職前の2年間のうち雇用保険に入っていた期間が12ヶ月以上である必要があります。
そして一度失業保険をもらうと、雇用保険の加入期間の積算がリセットされます。
つまり、新しい職場で再度1年以上雇用保険に入っていないと、次の失業保険を受け取れません。
たとえ短い期間でも失業保険を受け取った後再就職し、すぐに離職した場合には、失業保険をもらえないのです。
退職後短い期間で再就職が決まるような場合は、失業保険をもらわない方が後々お得になるかもしれません。
失業保険受給の手続き
失業保険を受け取るには、自分が住む土地のハローワークにて手続きを行わなければなりません。
その際には、条件や必要書類を整え、スケジュール等を確認する必要があります。
ここでは、条件や申請などの手続き方法を説明します。
失業保険受給の手続き
- 失業保険受給の条件~もらえる人はどんな人?~
- 必要書類
- 必要書類の離職票がもらえないときは
失業保険受給の条件~もらえる人はどんな人?~
失業保険を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 就職の意思はあるにもかかわらず失業状態であること
- (自己都合退職の場合)退職前の2年間の間に、雇用保険を支払っていた期間が12ヶ月以上あること
- (会社都合退職の場合)退職前の1年間の間に、雇用保険を支払っていた期間が6ヶ月以上あること
雇用保険に加入できているか調べる簡単な方法としては、「給与明細の確認」があります。
給与明細の「雇用保険」の欄に金額が記入されていれば、雇用保険に加入できています。
必要書類
退職後、ハローワークに行く際には、以下の書類が必要になります。
- 身分証明書
- 印鑑
- 本人名義通帳
- 離職票-1
- 離職票-2
- 雇用保険被保険者証
「離職票」や「雇用保険被保険者証」は初めてその名前を聞く方も多いかもしれません。
これらは退職時に受け取るか、退職後郵送されてきます。ただ念の為、退職時にはどのように「離職票」や「雇用保険被保険者証」を受け取れるか確認しておく方が無難です。
必要書類の離職票がもらえないときは
離職票は一般的に退職してから10日から2週間程度で郵送により届くことになります。
離職してから数日しか経っていなければ焦る必要はありませんが、2週間を過ぎても届かない場合、会社に連絡をするなど対応を検討した方がよいかもしれません。
特に、会社に何度連絡しても離職票を郵送してくれない場合は、自宅の近くのハローワークに行き、事情を伝えましょう。ハローワークを通じ、会社に発行するよう依頼できます。
失業保険受給までの6ステップ
失業保険はすぐにもらえるわけではありません。いくつかの手続きが必要となります。
手続きが滞り受給が遅れると、家計のやりくりに支障をきたすことも考えられます。
ここでは失業保険を受給するまでのステップを紹介します。
どのような手続きが必要かしっかり理解し、スムーズに受給できるようにして下さいね。
失業保険受給までの6ステップ
- ステップ①ハローワークへの失業の申請
- ステップ②7日間の待機期間
- ステップ③雇用保険受給説明会
- ステップ④失業認定
- ステップ⑤(自己都合退職の場合)給付制限期間
- ステップ⑥受給
ステップ①ハローワークへの失業の申請
上の項で説明した必要書類をハローワークに持っていき、申請を行います。
この際に前職の退職理由や受給要件の確認が行われ、資格の決定が行われます。
ステップ②7日間の待機期間
申請し受給が決定してから、7日間は失業状態でいる必要があります。
この期間のことを「待機期間」と呼びます。
自己都合退職であっても会社都合退職であっても、この7日間の待機期間は必ず発生します。
そして、この期間中は雇用形態に関係なく、働くことはできません。
この期間にアルバイト等をすると待機期間が延長になり、受給開始日に影響が出る可能性があります。ご注意下さい。
ステップ③雇用保険受給説明会
さらに、雇用保険受給説明会への出席が必要となります。雇用保険受給説明会は、申請から1~3週間後に実施されます。
受給説明会では失業保険の仕組みや、職業訓練などについて説明されます。
特に職業訓練の内容などは地域によって違いますので、わからないことがあればここで詳しく質問しましょう。
ステップ④失業認定
失業認定とは「仕事を探しているが見つからず失業している状態」をハローワークが認定することです。失業保険の受給には、この失業認定をもらうことも必須となります。
失業認定を受けるには、原則として2回以上の求職活動が必要となります。
求職活動とは、ハローワークや求人サイト等で求人に申し込んだり、面接や説明会に参加したりすることです。
ステップ⑤(自己都合退職の場合)給付制限期間
自己都合退職の場合、7日間の待機期間に加え、3ヶ月の給付制限期間があります。
つまり、失業保険の申請を行ってから最短で3ヶ月と7日経たないと、失業保険を受給できません。
ちなみに会社都合退職の場合は、給付制限はありません。最短で7日間の待機期間後に失業保険を受給できます。
ステップ⑥受給
失業保険は、失業認定日の4~7日後(自己都合退職の場合は3ヶ月の給付制限が終わってから)に振り込まれます。
失業保険を活用する5つのポイント
最後に、失業保険を活用する上での5つのポイントについて解説します。
失業保険を活用する5つのポイント
- ポイント① 失業認定日を忘れると失業保険がもらえない
- ポイント② 妊娠や出産、病気やケガなどがあった方は延長ができる
- ポイント③ 早くに就職が決まった人は「再就職手当」がもらえる
- ポイント④ 失業認定日を忘れると雇用保険がもらえない
- ポイント⑤ 失業保険中にアルバイトはしてもOK。 ただし申告は必須!
- ポイント⑥ 失業保険の不正受給には大きなペナルティがある
ポイント① 失業認定日を忘れると失業保険がもらえない
受給が決定してからも、1ヶ月ごとに失業認定を受け続ける必要があります。これを忘れると失業保険がもらえません。
また、失業認定日までに2回以上の転職活動が必要となります。
ポイント② 妊娠や出産、病気やケガなどがあった方は延長ができる
失業保険がもらえるのは原則1年以内です。
しかし、失業保険をもらっている期間内に、病気やけが、妊娠や出産などの理由で引き続き30日以上働くことができなくなった場合には、受給の延長を申請することができます。
本来の受給期間1年にプラスして3年延長でき、最大4年まで延長することが可能です。
この制度をうまく使えば、妊娠や出産、子育て期間中に失業保険を延長することができます。
手続きにはお住まいのエリアを管轄するハローワークへの申請が必要です。
本人がハローワークに訪れて申請する以外にも、代理人や郵送により申請する方法がありますので、身重な方でも申請可能です。
ポイント③ 早くに就職が決まった人は「再就職手当」がもらえる
失業保険を最後までもらう前に就職が決まった人は、残りの失業保険の金額をもらえずに終わります。
なんだか損した気になりますよね。そんな方は、「再就職手当」がもらえないか検討して下さい。
手当がもらえるのは、「支給期間が1/3以上、かつ45日以上残っている人」です。
ただし、「過去3年以内に再就職手当をもらった人」や「同じ会社に再就職した人」などは対象になりませんので注意して下さい。
ポイント④ 失業認定日を忘れると雇用保険がもらえない
受給が決定してから、1ヶ月ごとに失業認定が行われます。
この失業認定日を忘れると、「失業状態かどうかわからない」と判断され、振り込みが実施されません。
また前に述べたように、失業認定日までに2回以上の転職活動が必要なので、こちらも忘れず活動されて下さい。
ポイント⑤ 失業保険中にアルバイトはしてもOK。 ただし申告は必須!
失業保険受給中に気になることの1つが、「短期のアルバイトができるのか」ということではないでしょうか。
特に、自己都合退職の方は3ヶ月の給付制限期間中には収入がありませんので、生活のためにアルバイトをしたいという方も多いと思います。
結論からいいますと、失業保険受給中のアルバイトはOKです。
ただし、ハローワークへ必ず申告しましょう。また労働時間は1週間に20時間までである必要があります。シフトなどを組む際には注意して下さい。
1週間に20時間を超えたり、申告が漏れた場合は、給付がストップしたり、罰金が発生したりする可能性があります。そのため事前にハローワークへ相談することをお勧めします。
ポイント⑥ 失業保険の不正受給には大きなペナルティがある
ポイント⑤でもお伝えしましたが、「働いたのに申告しなかった」や「就職日を偽って申告する」等は不正行為にあたるときがあります。
不正行為が発覚すると、次の5つのような厳しいペナルティが発生します。
- (支給停止処分)不正行為があった日から、一切失業保険をもらえなくなります
- (返還命令処分)不正行為により受け取った失業手当は、全額返還しなければなりません
- (納付命令処分)全額返還に加え、受け取った失業手当の2倍以下の金額を罰金として納付しなければなりません(つまり最大で、不正受給した金額の3倍となります)
- (延滞金)さらに延滞金が課せられます
これらの支払いを怠った場合は、財産の差し押さえが行われたり、詐欺罪(刑法第246条)などにより処罰されたりすることがあります。
うっかりアルバイトの申告を忘れただけでも不正受給とみなされ、多額の罰金を払わなければならない可能性があるのです。ご注意下さい。
失業保険を利用して賢く転職活動しよう
以上のように、失業保険のメリット・デメリットや、手続きについてまとめました。
失業保険は退職後や転職活動中の生活を助けてくれる、とても便利な制度です。だからこそ、この仕組みをきちんと理解し、正しく活用することが大切です。
失業保険期間中のアルバイトや、妊娠等の失業保険延長などのポイントも見落とさず、お得に活用しましょう。
また受給するときには、デメリットと自分の今後のライフスタイルもしっかり考慮して下さいね。