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依然として続く新型コロナウイルスの影響で、生活保護を申請する人が増加中です。
業種によっては、政府による休業要請で仕事ができず減収したり、最悪のケースでは職を失ったりする人も出ています。
コロナ禍の収束する兆しが見えなければ、幅広い年齢層でも生活に困窮する人が出てくる恐れもあります。
ワクチンが投与されてもすぐに効果が出るとは限らず、厳しい状況であることには変わらないでしょう。
明日は我が身となることも否定できません。
そこで本記事では、生活保護に関して対象となる条件や申請方法などを解説していきます。
※この記事で解説する生活保護に関する情報は、2021年1月時点の内容です
生活保護とは?
生活保護制度とは、思わぬ病気やケガ、失業などにより、経済的に苦しく困っている人に対して行われ、必要最低限の生活費を公的に支給する制度です。
国や自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」をできるよう、住まいや生活、医療、介護などの費用を支給してくれるのです。
生活保護の支給要件を満たしている人であれば、審査に通過するのはそれほど難しくありません。
支給される保護費は、居住する地域や家族構成など、様々な状況によって異なります。
生活保護を取り巻く現況
新型コロナウイルスの影響で、普通の労働者が生活に困窮し、生活保護を求めるケースが増えてきています。
今までは病気やケガが原因で働けない人が中心に生活保護を利用していましたが、受給者層に変化が生じていると言えるでしょう。
こうした状況をふまえ、生活保護を取り巻く現況を紹介します。
生活保護を取り巻く現況
- 認められる資産の範囲が狭いことが問題
- 自営業者の積極的な活用を促している
認められる資産の範囲が狭いことが問題
生活保護の申請が認められるためには、資産を持っていない状態である必要があります。
1か月分の最低生活費の半分よりも多い預貯金を持つ
持ち家・不動産・車などの売却できる資産を持つ
預貯金がほぼない状態で生活保護の支給を開始したとしても、生活保護費だけでは日々の生活で精いっぱいなので、無貯蓄状態の生活の継続を強いられます。
また、原則として自動車を保有していると、生活保護の申請は通りません。
特に地方では自動車がなければ生活がままならなくなってしまうこともあり、生活保護の申請をためらう人もいるでしょう。
現状ほぼ身ぐるみ剥がされた状態でなければ利用できず、生活保護は使いづらい制度だと言わざるを得ません。
より労働者が利用しやすい制度に変えるためには、保有できる資産の拡大が求められます。
自営業者の積極的な活用を促している
新型コロナウイルスの影響を大きく受けているのは、飲食店経営者などの自営業者です。厚生労働省は、自営業者に対して積極的な生活保護の活用を呼び掛けています。
厚労省は「収入の減少により要保護状態に陥った場合、緊急事態措置の経過により収入が増加する見込みがある時は、増収に向けて自営業者には転職指導を行うことを差し控えてほしい」と述べています。
具体的な自営業者への救済措置として、自営に必要な店舗、機械器具類といった資産は、保有した状態でも生活保護を認めるよう指示しました。
つまり、コロナ禍の中でも、自営業者は事業復活の再起を狙いながら生活保護の支給を受けられます。
状況によっては今後、自営業者だけでなく労働者全体に支給要件の緩和措置が取られる可能性もあります。
生活保護の申請条件・受給対象者
生活保護は誰でも申請できるわけではありません。受給するためはいくつかの条件をクリアする必要があります。
生活保護の申請条件・受給対象者
- 基本的には生活保護を申請する人が世帯主であること
- 現在所有する不動産など財産を処分しなければならない
- 収入が最低生活費に満たないことも条件になっている
基本的には生活保護を申請する人が世帯主であること
生活保護は、世帯単位で利用するのが原則です。このため、世帯主となる人が申請をしなければなりません。
世帯とは暮らしを共にしている家族のことです。
例えば、知人宅へ居候している場合など同じ住居に住んでいたとしても、「生計を共にしている」とは言えないため同一世帯とはみなされません。
現在所有する不動産など財産を処分しなければならない
先に述べたように、認められる資産の範囲が狭いため、生活保護の申請には、基本的に所有する財産を処分しなければなりません。
持ち家はもちろん、クレジットカード、生活に必要不可欠とは判断されない車やバイク、2台目以上のパソコン、スマートフォン、タブレット等が挙げられます。
さらに、高級家具・家電やブランドの時計、宝石類美術品なども可能な限り売却する必要があります。
処分した金銭を生活費に充てるためです。
収入が最低生活費に満たないことも条件になっている
収入とは、働いて得た収入のほか、以下のような収入も含みます。
- 持ち家や車、家財道具などを売って得た収入
- 相続したお金
- 保険金
- 失業保険手当
現在の収入が最低生活費に満たない場合に生活保護費を受給できます。
最低生活費とは、健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要とされる費用です。後ほど詳しく説明します。
生活保護の受給金額がいくらか調べる方法
生活保護を受けるための申請条件や受給対象者が分かりました。
続いて、具体的にいくらほどの金額が保護費として受給できるのか見ていきます。
生活保護の受給金額がいくらか調べる方法
- 最低生活費から収入を差し引いた差額が支給される
- 身体障害に該当、または母子世帯等の場合は加算される
- 住宅・教育・医療などに関する扶助も必要に応じて加算
最低生活費から収入を差し引いた差額が支給される
ポイントとなるのは、厚生労働省が算定する「最低生活費」です。最低生活費は、居住地域や家族構成、障害の有無などを考慮して算出されます。
出典:生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(平成30年4月現在)
生活保護費は、収入が最低生活費に満たない場合にその差額が支給されます。
また、生活保護費は住宅、医療、教育など8種類の「扶助」というカテゴリーがあり、必要に応じてこれらが支給されます。
以下の表で確認してみましょう。
生活扶助(日常生活費用) | 年齢別に算定された食費や、世帯に応じた光熱水費等を合算して算出。母子加算等もあり |
---|---|
住宅扶助(アパート等の家賃) | 定められた範囲内で実費支給 |
医療扶助(医療費用) | 費用は直接医療機関へ支払われる |
教育扶助(義務教育に必要な学用品費用) | 定められた基準額を支給 |
介護扶助(介護サービス費用) | 費用は直接介護事業者へ支払われる |
出産扶助(出産費用) | 定められた範囲内で実費支給 |
生業扶助(就労に必要な技能の修得等にかかる費用) | 定められた範囲内で実費支給 |
葬祭扶助(葬祭費用) | 定められた範囲内で実費支給 |
扶助の内容ごとに実費払いや直接支払いなど、支給方法が異なることがポイントです。
また、8種類の「扶助」のうち、生活扶助と呼ばれるものは、食費や光熱水費、被服費などの生活費に当たるもの。
令和元年10月1日現在における生活扶助額例は以下のとおりです。
- 例1)夫33歳・妻29歳・子供4歳の3人世帯
東京都区部等に住む場合は月額158,760円、地方郡部等に住む場合は139,630円 - 例2)母30歳・子供4歳と2歳の母子世帯
東京都区部等に住む場合は月額190,550円、地方郡部等に住む場合は168,360円
※児童養育加算等が含まれています
生活扶助額は、世帯主や世帯の構成、住む地域の物価などによって変わってくることがわかります。
身体障害に該当、または母子世帯等の場合は加算される
また、「生活扶助」は2つの項目で構成されています。衣食や光熱水費などの「基準生活費」と「加算」です。
基準生活費には、世帯ごとの特別な事情が考慮されていません。
一方で「加算」は個々の状況によって判断され、「障害者加算」や「母子家庭加算」などが生活扶助費に更にプラスされます。
- 障害者加算:
身体障害者障害程度等級や住む地域によって15,380~26,810円が加算 - 母子家庭加算:
住む地域によって児童1人の場合は16,100~18,800円、児童2人の場合は20,200~23,600円が加算。さらに、3人以上の児童1人につき2,500~2,900円が加算される
出典: 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和2年10月)
ただし、障害者加算と母子加算は原則、同時に受給はできません。
他にも「妊産婦」などがいる場合は、別途妊産婦加算等があります。
住宅・教育・医療などに関する扶助も必要に応じて加算
さらに、実際に支払っている家賃や地代も加算の対象に。基準額の範囲内で実費相当が支給されます。
東京都における単身世帯で40,900~53,700円が加算
教育に関しても、小学校、中学校、高校と子供が通う学校に応じて加算されます。
小学生2,600円、中学生5,000円、高校生5,200円が加算
他にも必要に応じて、教材費やクラブ活動費、高校の入学金等も支給の対象です。
自宅で介護等にかかった介護費の平均月額、診療等にかかった医療費の平均月額、出産、葬祭などの経費の一定額も加算されます。
以上が「最低生活費」に関する考え方ですが、全額支給されるとは限りません。
児童扶養手当などの収入があれば、その分は差し引かれます。
生活保護の申請方法と認定までの期間
続いて、生活保護の具体的な申請方法や、保護費認定までの流れを解説していきます。
- 居住地域にある福祉事務所の生活保護担当に相談する
- 必要に応じて世帯収入・資産等がわかる資料を提出する
- 保護決定のため実地調査や資産調査などが実施される
- 申請日から原則14日以内に生活保護の受給可否がわかる
1.居住地域にある福祉事務所の生活保護担当に相談する
現在住んでいる地域の福祉事務所へ足を運び、生活保護担当者に直接相談します。福祉事務所がないエリアの場合は町村役場でもOK。
生活保護担当者からは、制度の仕組みや各種社会保障施策等の活用についてしっかりとした説明を受けられます。
生活保護を申請する際は、内容を良く理解したうえで行いましょう。
2.必要に応じて世帯収入・資産等がわかる資料を提出する
生活保護の相談や申請に必要な書類は特別ありません。
申請は、生活保護申請書や資産申告書、収入申告書、同意書などに必要事項を記入するだけです。
ただし、生活保護の申請後に行われる調査で、世帯の収入や資産等の状況がわかる資料の提出が必要になることもあります。
通帳の写しや給与明細等を資料とする場合が多いでしょう。
3.保護決定のため実地調査や資産調査などが実施される
申請後、福祉事務所の担当員が家庭訪問などを行い、生活保護が必要か否かを調査します。
現在の生活状況、世帯主や家族の健康状況、収入や資産の状況など、保護の決定に必要な事項を調べます。
プライバシーは守られるため、安心して現況を伝えましょう。
さらに、預貯金・生命保険の加入状況についても調査が実施されます。医療が必要な人については、主治医等に病状を確認することがあります。
4.申請日から原則14日以内に生活保護の受給可否がわかる
生活状況や資産調査などの結果をもとに、申請後、原則14日以内に生活保護を受給できるか、できないかの回答が出されます。
生活保護の内容も合わせて文書で通知されます。
万一、生活保護開始までに必要な当座の生活費がない場合、社会福祉協議会の「臨時特例つなぎ資金貸付」を利用することも可能です。
支給方法は、原則として毎月決められた日に1か月分の保護費が金銭で支給されます。
また、介護費や医療費などは福祉事務所が代わって支払いをするケースも。
さらに、一時的に必要な被服費や転居費用が支給される場合もあります。
生活保護申請に関するよくある質問
はじめて生活保護を申請する方は、手続きのことなど様々な疑問が生じるはずです。
生活保護申請に関するよくある質問をまとめましたので、チェックしてみてください。
生活保護申請に関するよくある質問
- 生活保護を受けると何に対して扶助が受けられる?
- 福祉事務所に申請にいけない時はどうすれば良い?
- 審査が却下されたが納得できない時はどうすれば良い?
生活保護を受けると何に対して扶助が受けられる?
生活保護ではどんな費用が扶助(支給)されるでしょうか。
「生活保護の受給金額がいくらか調べる方法」の章で説明しましたが、生活扶助や住宅扶助といった8つのカテゴリの中から、原則定められた範囲で実費支給されます。
それぞれの扶助をもう少し具体的に説明します。
- 生活扶助:食費や光熱費など日々のくらしにかかるお金。交際費も含まれる。
- 住宅扶助:家賃や地代、住宅の修繕費、更新費、引っ越し費用等
- 医療扶助:診察代、投薬料、通院費
- 介護扶助:介護サービスや福祉用具等にかかる費用
- 教育扶助:教材費や給食費等、義務教育にかかる費用
- 出産扶助:病院や助産施設などで出産する費用
- 生業扶助:就職の準備にかかる費用等
- 葬祭扶助:葬式にかかる費用
生活保護は基本的に金銭給付が行われますが、内容によっては現物給付になる場合も。現物給付とはサービスそのものを指し、例えば介護扶助では介護サービスが受けられます。
福祉事務所に申請にいけない時はどうすれば良い?
原則、生活保護の申請は福祉事務所に出向いて行う必要があります。しかし、病気やケガを理由に福祉事務所に行けない人もいるでしょう。
福祉事務所に申請に行くことができなければ、まず福祉事務所に連絡してみてください。申請しなくとも、ケースワーカーが必要だと認めれば、生活保護の受給を受けられます。
電話やメールで状況を説明すれば、ケースワーカーが動いてくれる可能性もあります。通常の申請と同様、ケースワーカーが自宅訪問を行い、支給の可否を決定します。
これを職権保護といい、生死にかかわる差し迫った状況の場合、本人の申請なしに保護を開始可能です。
審査が却下されたが納得できない時はどうすれば良い?
状況によっては、生活保護の申請が却下される場合もあります。しかし、生活がままならない状態では審査の結果に納得できない方もいるでしょう。
却下判定に納得がいかない時は、審査請求の手続きが取れます。審査請求とは、行政庁の違法または不当な処分に対し、国民が不服を申し立てできる制度です。
審査請求には期限があり、処分があったことを知った日の翌日から数えて3ヵ月以内に行う必要があります。
また審査請求の結果にも納得がいかなければ、再審査請求を行うことも可能です。
再審査請求は、審査請求の裁決があった日の翌日から起算して、1ヵ月以内に行う必要があります。
再審査請求の結果にも納得がいかない時は裁判手続きに移行も可能ですが、この場合は弁護士などの専門家に相談しましょう。
生活保護の条件や申請方法について改めて整理
生活保護とは、病気やケガ・失業などを理由に、経済的に苦しんでいる人に対して最低限の生活費を支給する制度です。
生活保護の申請条件や受給対象者は以下の通りです。
- 基本的には生活保護を申請する人が世帯主であること
- 現在所有する不動産など財産を処分しなければならない
- 収入が最低生活費に満たないことも条件になっている
基本的に生活保護の受給を受けるには、資産がない状態である必要があります。
現在は新型コロナウイルスの影響で生活保護の申請者が一般の労働者層に広がったこともあり、現状の申請条件は厳しいのではと問題視されています。
生活保護を受けるには、預貯金がほぼない状態で車や不動産も処分しなくてはいけないので、利用したくてもできない人が多いです。
上記の問題提起を受けて、国は申請条件の緩和の動きを見せています。
直近では自営業者には、自営に必要な店舗や機械器具類の保有を認めています。
こういった動きもあるので、申請する前から「自分の条件では審査に落ちるだろう」と諦めずに手続きを行ってみることが大切です。